「覚えること」が増えるほど集中力は落ちる?
テスト前になると、
- 英単語
- 数学の公式
- 化学反応式
- 歴史の年号
など、一度に大量の情報を覚えようとする人は多いでしょう。
しかし、「覚えること」を増やせば増やすほど、勉強の効率は本当に上がるのでしょうか。
2026年に発表された認知科学の研究では、ワーキングメモリ(作業記憶)の中に保持している目標の数によって、注意の向き方が変化することが示されました。
一見すると基礎研究ですが、「暗記を詰め込みすぎるとなぜ集中しづらくなるのか」「勉強中に余計なものへ気を取られる理由」を理解するヒントになる研究です。
この記事では、最新の研究内容をわかりやすく解説し、勉強への応用方法まで紹介します。
結論
ワーキングメモリに多くの情報や目標を保持すると、注意の使い方が変化し、必要な情報へ集中しにくくなる場面があります。
つまり、
- 一度に覚える内容を増やしすぎない
- 学習内容を適切な量に分ける
- 「今やること」を明確にする
といった工夫が、集中力を維持するうえで重要になる可能性があります。
研究概要
ソースについて(プランA検証)
今回紹介するのは、2026年にFrontiers in Cognitionへ掲載された査読付き論文です。
この研究では、
ワーキングメモリに保持している複数の目標が、視覚的注意(Visual Attention)へどのような影響を与えるか
を実験によって検証しました。
これは勉強法そのものを調べた研究ではありませんが、注意・集中・記憶の仕組みを理解するうえで重要な基礎研究です。
ワーキングメモリとは?
ワーキングメモリ(Working Memory)は、
「今この瞬間に一時的に情報を保持し、それを使って考えるための記憶」
です。
例えば、
- 英文を読みながら意味を考える
- 数学で途中式を保持する
- 化学反応式を頭に置いたまま計算する
といった場面で使われます。
長期記憶とは異なり、保持できる情報量には限界があります。
そのため、一度に多くの情報を抱え込むほど、処理効率が低下しやすくなります。
注意(Attention)とは?
私たちの脳は、周囲にあるすべての情報を同時に処理しているわけではありません。
必要な情報だけを選び出す仕組みが「注意」です。
例えば勉強中でも、
- スマホの通知
- 周囲の話し声
- 動く人影
- SNSを思い出すこと
など、多くの刺激があります。
注意は、その中から「今必要な情報」を優先的に処理する働きを担っています。
研究者たちは、ワーキングメモリに保持している情報が、この注意の向きを左右すると考えています。
実験では何を調べたの?
研究では、参加者に複数の目標刺激を覚えてもらい、その後に視覚探索課題を行わせました。
課題では、
- 覚える目標の数を変える
- 画面上から目的の刺激を探す
- 途中で目標と似た刺激を表示する
という条件を比較し、注意がどのように引きつけられるかを測定しました。
特に、
- 2個
- 4個
- 16個
という異なる数の目標を保持した条件を比較し、ワーキングメモリの負荷が注意へ与える影響を詳しく分析しています。
実験結果
研究の結果、ワーキングメモリ内で保持する目標数によって、注意の働き方が変化することが確認されました。
保持する情報が少ない場合には、記憶していた目標が視覚探索を助ける場面が見られました。
一方で、保持する情報量が増えると、注意の配分は複雑になり、目標情報の利用効率も変化しました。
この結果は、「覚える量を増やせば増やすほど効率が上がる」という単純な関係ではないことを示唆しています。
なぜこの現象が起こるのか?
ワーキングメモリは容量に限界があるため、多くの情報を同時に保持すると、それぞれの情報へ割り当てられる認知資源が少なくなります。
その結果、
- 必要な情報を素早く取り出しにくくなる
- 関係のない刺激にも注意が向きやすくなる
- 判断に時間がかかる
といった現象が起こる可能性があります。
脳科学では、このような注意の制御には前頭前野と頭頂葉を中心としたネットワークが関わると考えられています。ワーキングメモリへの負荷が高まるほど、これらの領域が処理すべき情報量も増え、注意のコントロールが難しくなると考えられます。
勉強への応用|「覚えれば覚えるほど良い」とは限らない
この研究は勉強法を直接検証したものではありません。しかし、ワーキングメモリと注意の関係を考えると、日々の学習へ応用できるヒントが数多くあります。
① 一度に覚える量を欲張りすぎない
試験前になると、
- 英単語を300語
- 化学反応式を100個
- 歴史の年号を一気に暗記
といった勉強をしたくなるかもしれません。
しかし、一度に大量の情報をワーキングメモリで扱おうとすると、注意が分散し、かえって効率が落ちる可能性があります。
おすすめは、
- 英単語20〜30語
- 数学の公式5〜10個
- 化学反応式10個程度
など、小さな単位で区切って学習することです。
② 「今やること」は1つに絞る
勉強中に
- 次は英語をやろう
- あとで数学も…
- 今日中に物理も終わらせたい
と複数の課題を頭の中で抱えていると、それだけでもワーキングメモリを消費します。
勉強中は、
「今は数学だけ」
のように現在取り組む課題を明確にすると、注意を集中させやすくなります。
③ ToDoリストを活用する
やるべきことを頭の中だけで管理すると、ワーキングメモリに余計な負荷がかかります。
紙やアプリへ書き出すことで、
「覚えておかなければ」
という負担を減らせます。
これは認知心理学でいう**認知的オフローディング(Cognitive Offloading)**の考え方とも一致します。
④ 科目を細かく切り替えすぎない
25分ごとに科目を変える人もいますが、
- 数学
- 英語
- 化学
- 物理
と頻繁に切り替えると、そのたびに新しい情報をワーキングメモリへ読み込む必要があります。
理解が必要な内容では、一定時間同じ科目へ集中したほうが効率的な場合もあります。
⑤ 暗記と演習を組み合わせる
暗記だけを続けるより、
- 英単語20語覚える
- すぐ問題を解く
- 思い出す
- 間違えたものだけ復習する
という流れのほうが、ワーキングメモリの負荷を抑えながら長期記憶への定着も期待できます。
実際に試してみた感想(一次情報)
私自身も以前は、「今日中に英語・数学・物理・化学を全部進めよう」と考えながら勉強していました。
その結果、目の前の問題を解いていても、「次は何をやろう」「あれも終わっていない」と別のことが頭に浮かび、集中が続かない日がありました。
そこで、勉強を始める前にその時間で取り組む内容を1つだけ決め、他の予定は紙のToDoリストへ書き出すようにしました。
すると、「覚えておかなければ」という負担が減り、目の前の問題へ集中しやすくなったと感じました。
もちろん個人差はありますが、「頭で管理する」のではなく「紙へ預ける」だけでも、勉強中の気が散る感覚が少なくなったのは大きな変化でした。
才能ではなく「脳の使い方」で差がつく
集中力が高い人は、生まれつき特別な能力を持っているように見えるかもしれません。
しかし、多くの場合は、
- やることを整理する
- 一度に抱える情報を減らす
- 必要な情報だけへ注意を向ける
といった「脳の使い方」が上手いだけです。
ワーキングメモリには誰にでも限界があります。
だからこそ、その限界を理解し、情報量を調整することが、効率的な学習につながります。
この研究の限界
今回紹介した研究は、注意やワーキングメモリの仕組みを調べるための基礎研究です。
そのため、
- 実際の学校の授業
- 受験勉強
- 資格試験
を直接調べたわけではありません。
また、実験で用いられた視覚探索課題は、実際の勉強とは状況が異なります。
したがって、「一度に○個以上覚えると成績が下がる」といった結論を導くことはできません。
一方で、ワーキングメモリの容量に限界があることは、多くの認知心理学研究でも繰り返し示されており、本研究もその理解を深める重要な知見の一つと言えるでしょう。
おすすめの本・学習グッズ
『ワーキングメモリを鍛える』
おすすめ理由:
ワーキングメモリの基本的な仕組みや、日常生活・学習との関係を理解したい人におすすめです。
『超効率勉強法』
おすすめ理由:
ワーキングメモリや認知心理学を踏まえた学習法が紹介されており、本記事の内容を実践へつなげやすい一冊です。
ポモドーロタイマー
おすすめ理由:
一定時間、1つの課題だけに集中する習慣を作りやすくなります。
ノート・タスク管理メモ
おすすめ理由:
頭の中のToDoを書き出すことで、ワーキングメモリへの負荷を減らし、目の前の勉強へ集中しやすくなります。
スマホロックボックス
おすすめ理由:
視覚的な誘惑を減らし、注意資源を勉強へ向けやすくします。
FAQ
Q1. ワーキングメモリは鍛えられますか?
ある程度のトレーニング効果は報告されていますが、その効果が他の課題へ広く転移するかについては、現在も研究が続いています。
Q2. 暗記量は少ないほうが良いのですか?
いいえ。
重要なのは「一度に扱う量」です。
長期的には多くの知識を身につけることが大切ですが、1回の学習で処理する情報量は適度に区切るほうが効率的です。
Q3. この研究は受験勉強にも役立ちますか?
直接受験を調べた研究ではありませんが、集中力や注意の仕組みを理解することで、学習計画や勉強方法を改善するヒントになります。
まとめ
2026年の最新研究では、ワーキングメモリ内で保持する情報量によって、注意の働き方が変化することが示されました。
勉強では、
- 一度に覚える量を調整する
- やることを1つに絞る
- ToDoを書き出す
- 科目を頻繁に切り替えすぎない
といった工夫が、集中力を維持する助けになる可能性があります。
「もっと覚えよう」と情報を増やすだけでなく、「脳が無理なく処理できる量」を意識することも、効率的な学習への大切な一歩です。
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参考文献
- Frontiers in Cognition. Working memory templates and attentional guidance(2026)
- Baddeley A. Working Memory.
- Cowan N. Working Memory Capacity.


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